拡大するタイ富裕層とプライベートバンキング市場の発展

最終更新日 2021年7月26日 by タイランドピックス編集局

急速かつ力強い発展を遂げるタイのウェルスマネジメント業界
タイ王国のウェルス・マネジメント業界は、家計資産が着実に増加し、潜在的な富裕層および超富裕層投資家のグループが拡大していることを背景に、急速かつ力強い発展を遂げています。これに加えて、相続税・贈与税の導入、外国為替規制や複雑な金融商品への投資規制が大幅に緩和され、2014年頃からクレディ・スイス、ロンバー・オディエ、ジュリアス・ベアなど海外のプライベートバンクの市場参入が促されてきました。

タイのウェルスマネジメント業界は、アジアの成熟市場と比較してまだ発展初期段階にありますが、地場商業銀行および国際銀行、証券会社、資産運用会社らが、幅広い投資手段とウェルス・マネジメントを提供しています。

 

タイの富裕層市場

世界全体の富は2018年から2024年の6年間で、中国を中心に年平均成長率7%の勢いで拡大しています。タイの場合も同様に、富裕層と超富裕層を中心に年平均成長率5%と堅調な成長が見込まれています。世界的に見ても、成長が最も速いのは上位富裕層であり、今後も民間資産の流れと投資傾向を後押しする可能性が高いです。

投資可能な資産が100万米ドルを超えるタイの富裕層(HNW)の数は、2016年から2017年に11%増加しましたが、それ以上に5,000万米ドルを超える超富裕層の数は21%、億万長者の数は33%と大きく増加し​​ました。

SCBプライベートバンク_グローバルウェルス_タイランド ピックス

タイ富裕層は預金への資産配分と約70%高く、当座預金口座や普通預金口座、定期預金、外貨建MMF、定期ファンドなどの低リスク商品を好みます。しかし、より高いリターンとより大きなポートフォリオの多様化を求めるために、オフショア投資にますます目を向けています。タイにおける投資と資産管理率が他国に比べてまだまだ比較的低いことを考えると、タイ市場は成長する可能性が高いです。銀行業務の中では一般融資に比べ、ウェルスマネジメントは遥かに低リスクで利益の大きいビジネスだと言えます。

 

タイのプライベートバンキングサービス

タイのプライベートバンク市場は地場大手商業銀行であるサイアム商業銀行とカシコン銀行が大きなシェアを握っています。どちらも外資系の老舗プライベートバンクと提携して、当該部門を設立し共同運営しています。

一方で、外資単独でプライベートバンク事業を行う国際金融機関もいつくかあります。いずれのケースでも、シンガポールをはじめとした海外のオフショア市場を機能を有効活用してタイの富裕層の資産管理ニーズに対応しています。

サイアム商業銀行「SCB Private Banking」

タイ_プライベートバンク_サイアム商業銀行_SCB PRIVATE BANKING_タイランドピックス

タイ初の商業銀行であり、王室系資本のサイアム・コマーシャルバンク(SCB)は、2017年より総資産5,000万THBT以上の富裕層向け「SCB Private Banking」を開始しました。2020年時点で11,000名の顧客数と運用総額は8,500万THBを誇り、2024年にはAUM(管理資産)1兆THBを目標にしています。

SCBのウェルスカスタマーは3つのポートフォリオに分かれており、まず総資産200万THB以上の「PRIME」が250,000人、続く1,000万THB以上の「SCB FIRST」が80,000人、そして5,000万THB以上「SCB Private Banking」が11,000人の顧客をそれぞれ抱えています。

プライベートバンキングは150名のチームで構成されており、うち50名はSCB証券に在籍して横断的なサービスを提供できる体制を整えています。 5年連続で、Global Financeによってタイ最高のプライベートバンキングとして認められています。また、Private Banker International により、東南アジアで最も優れたプライベートバンキングサービスにも選ばれています。

また、2018年にはスイスの大手プライベートバンクJulias Baer社と合弁で資産管理会社「SCB Julias Baee」を設立し、総資産1億THB以上の富裕層向けの投資顧問サービスを開始しました。2020年にはスクンビット通りに荘厳なオフィスを開設。

カシコン銀行「KBank Private Banking」

タイ_プライベートバンク_カシコン銀行_KBank Private Banking_ タイランド ピックス

タイの旧農業銀行の歴史を有し、近年はデジタルバンク分野に秀でたカシコン銀行は、2017年よりスイスの老舗プライベートバンクのLombard Odier社と提携して、総資産5,000万THB以上の富裕層向け「KBank Private Banking」を開始しました。従来からある同社の「THE WISDOM」顧客を基盤にクライアント数を伸ばし、2020年時点で12,000名の顧客数と運用総額は80億THBを誇ります。

プライベートバンキングは160名のチームで構成されており、BTSプロンポン駅直結の高級デパート「EmQuartier」にオフィスを構えます。

HSBC Thailand

タイ_イギリス香港_プライベートバンク_HSBC Private Banking_タイランドピックス

英国ロンドンと香港に拠点を置くHSBC Thaiは1888年よりタイに進出し120年の歴史がありましたが、2012年にリテール事業とウェルスマネジメント「HCBC Premier」を廃止しました。しかし、2021年よりHSBCはタイに新しい事業ユニットを設立し、東南アジアではシンガポールに続く2箇所目のオンショア・プライベートバンキング・ビジネスを開始します。タイの富裕層がシンガポールなど国際資本市場の取引に参加することがより容易になります。タイは勿論、アジアでNo1のウェルスマネージャーになることを目指しています。

Credit Suisse

タイ_スイス_プライベートバンク_クレディスイス_Credit Suisse_タイランド ピックス

スイスのチューリッヒに本社を置くクレディ・スイスは2000年よりタイ市場に参入し、国内でフルサービスの証券ブローカーを運営しており、専任の現地投資銀行チームと調査チームを擁しています。2016年にはオンショアのウェルス・マネジメントサービスを開始しました。

2019年より新たにプルンチットのAthenee Towerにオフィスを構えています。

LGT

タイ_リヒテンシュタイン公国_プライベートバンク_LGT_タイランドピックス (1)

リヒテンシュタイン公国のファドゥーツに本社を置き、現在もリヒテン​シュタイン侯爵家が保有するプラベートバンクLGTが2019年よりタイに進出。バンコクのBTSプルンチット駅直結のPark Ventureに事務所を設置し、富裕層向け資産運用業務を開始しました。投資コンサルタントとプランナーのチームは、香港とシンガポールでの既存のLGT​プライベートバンキング機能をもってタイ事業を補完します。

 

今後の展望

今後、世界の富は過去5年間と同様のペースで成長し続けると予測されています。しかし、新興国は”富の成長”という点で先進国を上回り、アジアにおいてタイもその1つ中心になるでしょう。タイにおける個人富裕層と起業家の超富裕層は大きく成長しているセグメントであり、国内および地域の金融市場の継続的な拡大を牽引します。

また、高齢化社会、低金利、投資の必要性に対する意識の変化、そして政府の規制緩和やフィンテック業界支援を受けて、このウェルス・マネジメント市場が成長することは間違いないでしょう。そして、富裕層の資産運用ニーズの多様化と高度化が進む中で、プライベートバンクをはじめとするウェルス・マネジメント業界のプレイヤーの役割はますます重要になっていきます。

 

タイランドピックス
戦略コンサルティングチーム


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