タイの医療事情ガイド

タイ王国の医療事情を解説します。

タイの医療レベルや医療費、タイ人向けの公的医療保険システムと国公立病院、外国人向けの民間保険事情と私立病院、そして日本人向け医療事情に分けて解説します。

タイの医療事情の特徴

タイではタイ人は原則、公的医療機関では無料または手頃価格で医療が受けられますが、富裕層や外国人は病院が独自に料金を決める自由診療制の私立病院を受診するのが一般的です。医療レベルが気になるところですが、TOPクラスの国際病院では先進国並みの医療サービスを受けることが可能ですが、居住地域や加入保険の状況で受診可能な病院が異なるなど、経済格差や地域格差が大ききな医療格差を生んでいます。

患者ステータス毎の医療事情

  • 富裕層:民間保険を購入し、先進医療を備えた高級私立病院を受診。病院のメンバーシップを購入している場合も多い。
  • 公務員:公務員とその家族は医療機関の制限はなく、TOP公立病院から高級民間病院まで無料で受診可能など優遇。民間病院への入院時には本人負担が発生。
  • 会社員:民間企業の会社員は、社会保険を使って登録した医療機関で受診可能。優良企業は福利厚生として民間医療保険に加入しており、その場合は大手私立病院を自由受診できる。
  • 農家・自営業者:一般国民・農家・自営業者など国民75%が対象の医療給付”30バーツ保険”。居住地域の国公立病院のみ受診可能で、毎日長蛇の列ができる。
  • 外国人駐在員:会社手配で海外旅行保険(駐在員プラン)などに加入。日本人窓口がある高級私立病院や日系クリニックを利用。
  • 外国人現地採用:タイ人同様に社会保険を利用でき、指定のローカル病院を利用可能だが扶養家族は対象外。自ら民間保険に追加加入する人も一部いる。
  • ロングステイヤー:懐事情によって異なる。海外旅行保険や現地医療保険に入る人が基本だが無保険の高齢者も一部いる。

タイの公的医療保険の概要

タイの公的医療保険制度は、職業や雇用形態に応じて大きく3種類あります。誰もがいずれかに加入するという点では、皆保険に近い状態です。しかし、フリーアクセスではなく、受診できる医療機関は加入保険や居住エリアによって限られており、いまだ農村部やインフォーマルセクターを中心に無保険者も多いのが実情です。

国民医療保障(UC)

一般国民・農家・自営業者などが対象の医療給付で通称30バーツ保険。加入者数は約5,000万人と国民の75%が加入。保険料負担は1回の外来や入院につき30バーツの本人負担を徴収されるのみ。受診できる医療機関は、事前に登録した居住地域の国公立病院のみで私立は対象外。患者が多く待ち時間が長い。

公務員医療給付(CSMBS)

政府に勤務する公務員とその家族に対する福利厚生の医療給付。加入者数は約500万人、国民の8%が加入。原則、受診医療機関の指定制限はなく、外来は高級民間病院なでも無料受診です。償還額の上限設定無し、受診時の本人負担は無し、保険料負担は無し、退職後も適用など、非常に手厚い。

社会保険(SSS)

民間企業の従業員を対象にした労使折半の医療給付。加入者数は約1,400万人で国民の21%が加入。緊急時を除き、保険加入時に1箇所だけ選んだ指定ローカル病院でのみ保険適用され、通院・入院の医療費は完全無料。取締役以外の社員は強制加入で月々の保険料は最大750THB。タイで勤務開始後の最初の3ヶ月間は使えないので注意。

タイの国公立病院

国公立病院をはじめとした公的医療機関は1,025箇所あり、保健省、その他の政府省、公社・NGOそして地方自治体が管轄しています。9割の医療機関が一次医療機関で、公立の一次医療機関が農村部に多くあります。

殆どの公立病院は予算が不十分で医薬品等の使用にも制約があり、どこも終日人患者で溢れ返り、外来受診は長時間待つのが当たり前です。当然、医師は短時間に多くの患者を診なければならず、一人一人の患者に十分な時間をかけられない状況です。また、医師の多くは英語を話しますが、他の病院スタッフは通常タイ語しか話せないため、外国人は事務手続き等で問題を抱えます。

一方で、公立病院の中でも、最高峰の研究機関でもある大学付属のタイ三大公立病院(シリラート病院・ララマティボディ病院・チュラロンコン王記念病院)や大都市の基幹病院では、最新医療機器が備えられおり、高度な医療が行われています。これらの病院の医師は、アルバイトとして私立病院にも勤務しています。

 

代表的な公的医療機関

# 病院名 所在地 病院概要 病床数 医師数 外来患者
1 Siriraj Hospital シリラート病院 バンコク 1888年設立のタイ最古且つ 最大規模の病院。現在、マヒドン大学医学部の付属病院。 2,111  1,800 287万
2 Chulalongkorn Hospital チュラロンコン病院 バンコク 1914年にラーマ6世王の私財により赤十字社病院として設立。現在、チュラロンコン大学の付属病院。 1,479 196 146万
3 Ratchathew Hospital ラチャウィティー病院 バンコク 1951年に女性医療専用の病院として設立。 1,097 200 93万
4 Khon Kean Hospital コンケン病院 コンケン 1947年設立の東北地方の地域基幹病院。現在、コンケン大学医学部の教育センターに指定。 867 272 70万
5 Hat Yai Hospital ハットヤイ病院 ソンクラー 1958年設立の南部の地域基幹病院。3次医療サービスを提供。 640 188 20万
6 Nakorn Ping Hospital ナコーン・ピン病院 チェンマイ 1990年に総合病院として設立。レファラル・システムを推進する 病院として、計画作成等を行う。 585 146 53万
7 Pranakorn Sri Ayutthaya Hospital プラナコーンシーアユッタヤー病院 アユタヤ 1912年設立のアユタヤ初の医療機関。マヒドン大学ラマディボディ病院の関連院。 528 82 36万

タイの民間医療保険の概要

タイでは外国人居住者には現地採用社員(役員は除外)以外は公的保険制度は適応されないので、各自任意保険に加入する必要があります。しかし、日本など外国で加入した保険会社によっては保険が使える病院が指定されていることもあり、予め条件を予め調べておくことが必要です。また、ここでは割愛しますが、日本で住民票を抜かなければ国民健康保険の被保険者として、帰国時に海外医療費還付金を申請可能です。

地場の民間医療保険

タイの保険会社が提供する医療保険は、現地でビザを取得した後に加入可能。入院と外来プランや掛け金によって様々な保険を選ぶことができ、高級病院でもキャッシュレス対応可能。年齢、持病歴など健康状態の審査が厳しいのでリタイアメントビザの高齢者の方は要注意。ノービザの滞在者は加入不可。

海外旅行傷害保険

日本の保険会社が提供する旅行保険は、出発前に日本で契約するのが一般的。日本人のオペレーターのサポートや特約(携行品、個人賠償、緊急帰国費用など)がついており、サービスと補償額ともに手厚い。一方、外国の保険会社が提供する旅行保険は、タイからでもオンラインで申し込み可。

クレジットカード付帯保険

クレジットカード保険に付帯する旅行傷害保険。持ってるだけで保険が使える携行付帯、旅券などカード決済を条件に使える利用付帯の2種類があるので要注意。また、日本発行のカードは保険有効期限が日本出国後から3ヶ月以内と定めている場合が多い。複数枚のカード合算で補償額をUPさせるのがおすすめ。

タイの私立病院

民間医療機関は261院ありますが、バンコクをはじめとした大都市と観光都市に集中しています。日本とは異なり、タイの私立病院は株式会社の形態で運営される医療企業もあり、BDMSグループなどタイ証券市場(SET)の主要銘柄になっている大企業もあります。

代表的な私立病院の医療水準はかなり高く、日本の病院と比較しても遜色ないほど。中でも、TOPに君臨する4大私立病院に数えられる、バムルンラード国際病院、サミティベートスクンビット病院、バンコク病院、BNH病院は、現地富裕層、駐在員、そして海外からのメディカルツーリズム患者を対象にしており、外国人対応は勿論、先進国並の医療技術、ホテル並の施設を備えています。

なお、私立病院では診察料・治療費等は各々の病院が独自に定めており、日本と比べて安価とは言えません。高級病院は、サービスに比例して治療費・入院費は高額なので、民間医療保険は必須です。

# 企業名 所在地 企業概要   病床数 医師数 外来患者
1 Bangkok Hospital バンコク病院グループ バンコク BDMSの中核病院。タイ最大の大規模高級民間病院グループ。 343 632 61万
2 Bumrungrad Hospital バムルンラード病院 バンコク 東南アジア屈指の高級病院。年間100万人の患者を受け入れ、内40%が海外からの患者。 580 988 109万
3 Samitivej Hospital サミティベート病院グループ バンコク BDMS傘下の高級プライベート病院。年間100万人の患者を受け入れる。 275 583 43万
4 McCormick Hospital マコーミック病院 チェンマイ キリスト教団の監督する私立総合病院。北タイ4箇所の系列クリニックを所有。 400 76 23万
5 Aikchol Hospital アイコール病院 チョンブリ チョンブリー初の民間医療機関として設立。 262 131 30万
6 Vibhavadi Hospital ヴィパワディー病院 バンコク ドンムアン空港近くで、ベッド数250床、24時間体制の三次急性期の民間病院を経営。 263  486 46万
7 Khon Kean Ram Hospital コーンケンラム病院 コンケン BDMS傘下のラムカムヘン病院グループ。東北部及びメコーン川近隣国で最先端の病院として機能。 184 27 20万
8 Rajyindee Hospital  ソンクラー チョンブリ病院グループに所属。ソンクラーを訪れる外国人旅行者を中心に医療サービスを提供。 196 30 26万

タイの日本人医療

日本人10万人の医療ニーズ

タイで大使館に登録されている在留邦人数は64,000名(2019年)ですが、旅行者や一時滞在者を含めると常時10万人以上という試算もあるほど、日本人が多い国。特に、バンコクとシラチャーに駐在員が集中しており、チェンマイにはリタイヤ済高齢者が多いです。

日本人窓口がある医療機関

バンコクの国際病院では日本人専用の窓口を設置しており、予約・受付・診察・支払い・保険まで全て日本語で対応可能です。また、日本人スタッフが常駐する日系総合クリニック、歯科医院、薬局も数軒あり、安心の日本語医療体制が整っています。

先進国並みの医療レベル

バンコクのTOP私立病院の医療レベルは国際水準を満たしており、日本と大きく遜色ありません。むしろ、一部の領域では日本の平均的な病院より高い医療技術を有しています。日本語など他言語サービスに加えて、アメニティや豪華の設備さはも随一。一方で、手術・検査・入院などは非常に高額で、保険がないと大変なことになります。

タイの日本人向け医療機関

首都バンコクには英語話者の外国人は勿論ですが、英語が話せない在留邦人に対して手厚い日本語医療サービスを提供する民間医療機関があります。

日本人患者が多いバンコクの国際病院である、サミティベート病院、バムルンラード国際病院、バンコク’病院の3院には、タイの医師免許を持つ日本人医師、日本の医学部を卒業したタイ人医師、或いは日本の病院で研修経験のある医師・看護師が常勤しています。また、日本人専用チーム (ジャパンデスク)を設置して、日本人医療コーディネーター、日本語通訳(日本人又はタイ人)が勤務し、専用窓口を設けるなど、邦人患者の便宜を図っています。その他、チェンマイやパタヤの一部病院にも日本人の医療通訳が常勤しています。

また、バンコクの日本人居住地区として有名なスクンビットエリアには、日本人患者専用の日系クリニックが4軒あります。その他、日本人スタッフを常設する歯科クリニック、美容クリニック、薬局も数多くあります。

タイの医療費

タイの私立病院の基本的な医療費は、ドクターフィー(医師によって異なる)、ナースフィー(看護師)、施設利用費、外来患者診察費、薬剤費などから構成されます。一般外来の場合、ドクターフィーと薬剤費が割合ほとんどを占めます。高級病院の場合、検査が加わると費用が大きく変わります。

外来・初診料

風邪で受診して問診と薬剤費の総額(検査含まず)
・一般私立病院:6~9千円
・高級私立病院:1〜1.3万円
・日系クリニック:6千~1万円

手術費

急性虫垂炎(盲腸)での手術+入院費3日想定の総額
・一般私立病院:30~50万円
・高級私立病院:60~100万円

入院費

一般的な一人部屋の入院費(食事と看護サービス費込)
・基幹公立病院:3~4千円
・一般私立病院:1~1.5万円
・高級私立病院:3~5万円

救急車

慈善団体または各病院が優良で救急車を手配します。
・7000円

薬剤

民間病院の薬剤費は、同じ薬でも処方する病院によって価格が異なります。街中に薬局があり、日本では処方箋がないと買えないような薬も、気軽に購入できます。

ICU

ICUの入院費/日(食事と看護サービス費込)
・基幹公立病院:4千~1.5万円
・一般私立病院:2~3万円
・高級私立病院:8~9万円

タイの日本人医療の強い味方

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