最終更新日 2023年2月17日 by タイランドピックス編集局
タイ料理の歴史をさかのぼる新たな食体験
バンコクの”食の激戦区”スクンビットエリアに期待のミシュラン候補のタイ料理店「タイムカーン(Time Kaan/ร้านตามกาล)」が登場。2022年11月にナナにオープンしたこの店は、タイのどの高級店とも異なるコンセプトが際立っています。
レストランの場所はBTSナナ駅近く、ソイ8を200mほど奥に入った住宅街。タイ人富裕層の邸宅を1年間の工事期間をかけてリノベーションし、”時”をテーマにした53席のレストランへ生まれ変わらせました。
タイムカーンとは100年~1200年前のタイ料理レシピから各時代の食文化や人々の生活を感じる、というところまで含めた歴史料理を提供する高級タイ料理店です。
オーナーが名付けた店名には、時間に関係する様々な意味が込められています。一つは、中央アジアの遊牧民国家の君主の称号の”カーン(ハーン)”と”時を掛け合わせた”時間の支配者”。もう一つは、タイ語のタムとカンを合わせた「時間に応じて」の意味です。
タイムカーンが提供する歴史料理の再現は実に手間がかかっており、ヘッドシェフのPro氏が歴史本や文献資料を読み解き、当時の作り方を学ぶことから始まりました。足りない部分は想像力で補い、それを現代人の舌に合うように、独自のセンスとクリエイティビティを活かして再解釈。
キッチンを統括するPro氏は有名ミシュラン2つ星「ガガン(Gagaan)」に6年間勤めた経験豊富なシェフ。オーストラリアの大学で法律学を学び、アユタヤ銀行でのバンカーを経てシェフへ転校した異色の経歴の持ち主。
そうした作業を経て完成したのがこのコースメニュー。14品から成るコース完成までに要した期間は構想2年、準備6ヶ月。コース料金は一名THB 3,500++(税込16,000円)、ワインペアリングは別途THB 1,700++です。一品一品の料理の歴史が丁寧に説明されるコース料理は、”タイ料理の歴史をさかのぼる旅”とも言えます。
まず、コースに入る前に「時計形の小麦粉不使用の白ごまココナッツミルククッキー」がウェルカムディッシュとして提供されます。
コースの1品目は「もち米を酵母で2日間発酵させた飲み物」からスタート。お酒になる前の発酵段階ですが、かすかにアルコールを感じます。日本の甘酒のような風味ですが、タイらしく唐辛子の辛味がアクセントに。シェフがガガンの厨房にいたこともあり、タイムカーンの料理にはその影響が強く表れています。
2品目は「カニと米粉揚げの和えもの」。トーチジンジャーという赤い花のゼリーと甘辛タマリンドソースをトッピング。大きなカニの足は新鮮で甘味も感じられ、麺のサクッとした食感とよく合います。こちらは150年前のラタナコーシン王朝初期のレシピ。
3品目は「シーバスのミンチのラーブ(東北料理の香草を使ったサラダ)」。現代のラーブと異なり、レモン果汁を一切使わずに底に敷いたチャムアンの葉で酸味を出しています。隣には、マンゴーとキャッサバで作ったグラスクラッカーも添えられています。
4品目は「グリルチキンとナムプリックの混ぜご飯」です。700年以上前の人々が辛味ペーストとご飯を一緒に食べていた歴史があります。
5品目は「白身魚のカレーペースト」。タイでは珍しい希少種のハゼを使用し、ウコン、レモングラス、トマトの酸味がメインの味わい深い味わいです。
ウコンが効いたカレーペーストを使っているので、濃厚な味わいに。かつてタイ南部に定住したインドネシア人から着想をえた一品です。
6品目はカキの産地として有名な「スラタニー県産の大牡蠣」。マピッドグラニテとジンジャーがトッピングされており、酸味などが入り混じった新感覚。ドライアイスの煙に包まれてサーブされます。
7品目は珍しい「雷魚の卵のチューチー(炒めタイ・カレー)」です。魚卵は大きく、揚げてあるので食べやすいです。30種もの香草を使ったカレーのペーストは毎日店で手作り。魚卵はしっかりとした脂ののった食感で、チューチカレーペーストのスパイシーな風味との対比が絶妙です。
8品目は「天然のツバメの巣のチキンスープ」。生後3ヶ月未満のチェンマイ産の黒鶏を8時間煮込んでおり、芳醇な香りが口の中に広がります。スープの底には1kg30万円超の高級ツバメの巣が入っています。アユタヤ王朝のナライ王治世にルイ14世に献上した漢方スープとして伝わっています。
9品目は本コースで最も豪華な一品「川海老のグリル」。1尾200g以上の大きなテナガエビにナンプラーとオリーブオイルを合わせた酸味あるタレが良くマッチします。焼き川海老と言えば現代でもタイを代表する料理として親しまれており、過去から現在までのタイの人々と川の生活のストーリーが反映されています。
10品目はお口直しの「タイ産ブルーベリーのそのグラニテ」。ミントキャビアがトッピングに爽やかな酸味で口の中をリフレッシュ。
11品目は本コースのメイン料理である「ラム肉のリブロースステーキ」。豪州産の羊肉に、合わせるソースはタイ式にガピ、ターメリック、ココナッツミルクを混ぜた独特のもの。タイの近代化を支えたラーマ5世時代の料理です。
12品目からはスイーツ「スイカのワイン熟成」へ。果肉を2色のワインで色付けし、トッピングには口の中で“パチパチ”と弾けるような楽しみがあるキャンディーなど見た目にも美しく、食べて楽しいメニュー。伝統的なアユタヤ王朝のレシピに遊びを加えたシェフの自信作です。
13品目は”Gold Scratching Rock”と名付けられた、「米粉・ココナッツミルク・黒ゴマを混ぜ合わせたビスケット」。実は、トンブリー王朝時代に軍用食として重宝された”乾パン”のような保存食に着想を得ています。このお菓子の仕込みに3日間かかることには驚きです。
コースの〆は「クランベリーの花形クッキー」。アユタヤ王朝時代に関係が深かったポルトガルのお菓子で、日本の和菓子にも似ています。クランベリーの酸味とチョコレートのような滑らかな食感が特徴です。
14品のコースに要した時間は2時間。「Time Kaan」が紡ぐコースメニューは、まさに100年〜1200年前のタイの歴史をさかのぼる”タイムマシン”。料理を通じてタイムトラベルできる、唯一無二の食体験です。
本店はアラカルトはなく、メニューは4ヶ月ごとに更新されるコース料理のみ。ハラル対応(イスラム教徒向けの食品基準)、アレルギー対応も行っており、最先端グルメがひしめく都市バンコクで幅広い人種の食通から愛されるお店になること間違いなしです。
人気店のため事前予約が必須です。平日・週末の17:30~予約できます。
Time Kaan
- Call : +66 (0) 82 646 1664
- Hour : 17:30-23:00
- Location : 43 Soi Sukhumvit 8, BKK
- Web:https://www.ruamkaan.com/
- Instagram : https://www.instagram.com/