タイの医療事情

タイ王国の医療事情を解説します。

タイの公的保険医療制度

タイの公的医療制度は「公務員医療保険制度(CSMBS)」「被用者社会保障制度(SSS)」「国民皆保険(UC)」からなり、この3制度でほぼ全国民がカバーされています。

1. 国民医療保障 UC「30バーツ保険」

国民医療保証制度は、2002年施行の公務員、社会保険に該当しない一般国民、農家、自営業者などが対象の医療給付です。加入者数は約5,000万人。(国民の75%)

これは日本の国民健康保険に該当する、通称「30バーツ医療制度」です。タイ国籍で国内に住民票がある人のみが対象です。保険料は税財源で運営されますが、保険料負担は1回の外来や入院につ き30バーツの本人負担を徴収されるのみです。給付対象は加入者本人のみ。

タクシン政権による政治主導で導入され、2002年9月から30バーツを支払うことで1回の外来が可能な医療制度が施行されたことにより、国民皆保険制度が整備されました。償還額の上限が設定されており、タイを代表する高級病院などでは国民皆保険の患者は受け入れていません。

受診できる医療機関は、事前に登録した居住地域の国公立病院であり、病院受付は行列ができ待ち時間も非常に長いのが一般的です。

2. 公務員医療給付 CSMBS「公務員の福利厚生」

公務員医療給付制度は、1963年施行の政府に勤務する公務員とその家族に対する医療給付です。加入者数は約500万人。(国民の8%)

税財源による福利厚生として実施されており、原則受診医療機関の制限はなく、高級民間病院なでも無料受診可能です。しかし、民間病院への入院時には本人負担が生じます。また、償還額の上限が設定無し、受診時の本人負担は無し、保険料負担は無しなど、非常に優遇された制度です。退職後も適用されます。

3. 社会保険 SSS「民間被用者」

社会保障制度は、1990年施行の民間企業の従業員を対象にした医療給付です。加入者数は約1,400万人。(国民の21%)

保険料は労使折半の保険料と政府の追加拠出により賄われています。タイで企業では取締役を除いて全員が社会保険に強制加入であり、月々の保険料は最大750THB(2,600円)で給与天引で徴収されます。通常、労使折半ですが、一部の企業は雇用側が全額負担する場合もあります。日本人でも、社会保険加入の企業に勤めていれば、加入することが可能です。扶養家族は対象ではありません。

事前に登録した医療機関でのみ受診でき、一定の限度額を超えるまでは受診時の本人負担はなく、現物給付 (診療、看護、薬剤、移送など)や現金給付が行われる仕組みです。特例として、出産サービス利用時のみ、社会保険制度加盟病院全てで受診が可能となります。

外国人にとっては選んだ病院以外の病院は利用できない点がネックで、高級病院のように日本語カウンターがあるわけではなく、タイ語で診察を受ける事になるので、日本人がこの制度を利用する事は殆どありません。ですので、雇用企業や自身で別の民間医療保険に入りカバーするケースが一般的です。

 

タイの医療機関

タイの医療機関は、国公立病院などの公的医療機関が1,025、民間医療機関が261と8:2の割合で存在しています。

医療従事者の偏在が問題となっており、都市部(特にバンコク)に集中しており、北東部を中心とした地方では不足していおり、 バンコクと北東部では医師集中度に7倍の違いがあり深刻な問題となっています。

公的医療機関

国公立病院などの公的医療機関が1,025箇所あり、保健省、その他の政府省、公社・NGOそして地方自治体が管轄しています。9割の医療機関が一次医療機関で、公立の一次医療機関が農村部に多くあります。

公立病院の中でも以下に挙げるような中心的な基幹病院では、領域によっては高度な医療が行われています。公立病院は医療費が安いのが大きな魅力なのですが、その年間予算は不十分で、医薬品等の使用にも制約があります。また、どの病院も終日タイ人患者で溢れ返り、外来受診は長時間待つのが当たり前です。

当然、医師は短時間に多くの患者を診なければならず、一人一人の患者に十分な時間をかけられない状況です。また、医師の多くは英語を話しますが、他の病院スタッフは通常タイ語しか話せないため、外国人は事務手続き等で問題を抱えます。これらの点を考慮すると、日本人が公立病院を利用することはあまりお勧めできません。事実、長期滞在している日本人の多くは事情が許す限り私立病院を利用しています。

病院名 所在地 病院概要 病床数 医師数 外来患者
1 Siriraj Hospital
シリラート病院
バンコク 1888年設立のタイ最古且つ 最大規模の病院。現在、マヒドン大学医学部の付属病院としても位置付けられている。 2,111  1,800 287万
2 Chulalongkorn Hospital
チュラロンコン病院
バンコク 1914年にラーマ6世王の私財により赤十字社病院として設立。現在、チュラロンコン大学の付属病院として位置付けられている。 1,479 196 146万
3 Ratchathew Hospital
ラチャウィティー病院
バンコク 1951年に女性医療専用の病院として設立。現在では、女性 患者に限らず、医療サービスを提供している。 1,097 200 93万
Khon Kean Hospital
コンケン病院
コンケン 1947年設立の東北地方の地域基幹病院。現在、コンケン大学医学部の教育センターとして指定されている。 867 272 70万
5 Hat Yai Hospital
ハットヤイ病院
ソンクラー 1958年設立の南部の地域基幹病院。3次医療サービスを提供している。 640 188 20万
6 Nakorn Ping Hospital
ナコーン・ピン病院
チェンマイ 1990年に総合病院として設立。レファラル・システムを推進する 病院として、計画作成等を行っている。 585 146 53万
7 Pranakorn Sri Ayutthaya Hospital
プラナコーンシーアユッタヤー病院
アユタヤ 1912年設立のアユタヤ初の医療機関。現在は保健省運営下の 三次医療機関として位置つけられている。 528 82 36万

民間医療機関(私立)

タイの私立一次医療機関はバンコクなど都市部に集中しています。タイの私立病院は株式会社の形態で運営される民間のヘルスケア企業で、タイ証券市場(SET)の主要銘柄になっているものもあります。

バンコクでは、代表的な私立病院の医療水準はかなり高く、日本の病院と比較しても遜色ありません。それらの病院では、日本の医学部を卒業した医師、或いは日本の病院で研修経験のある医師又は看護師などが勤務しています。また日本語通訳(日本人又はタイ人)が勤務し、専用窓口を設けるなど、日本人受診者の便宜を図っています。

なお、私立病院では診察料・治療費等は各々の病院が独自に定めており、日本と比べて安価とは言えません。特に、日本人にも馴染みのあるバンコク病院、サミティベート病院、BNH病院、バムルンバード病院の4大高級病院は高額な医療費となりますので、事前に料金等を確認するか、または海外旅行傷害保険などの保険が適用されるか確認することが必要です。

企業名 所在地 企業概要   病床数 医師数 外来患者
1 Bangkok Hospital
バンコク病院グループ
バンコク BDMSの中核病院。タイ最大の大規模高級民間病院グループ。 343 632 61万
2 Bumrungrad Hospita l(BH)
バムルンバード病院
バンコク 東南アジア屈指の高級病院。年間100万人の患者を受け入れ、内40%が海外からの患者。 580 988 109万
3 Samitivej Hospital (SVH)
サミティベート病院グループ
バンコク BDMS傘下の高級プライベート病院。年間100万人の患者を受け入れる。 275 583 43万
4 McCoemic Hospital
マコーミック病院
チェンマイ キリスト教団の監督する私立総合病院。北タイ4箇所の系列クリニックを所有。 400 76 23万
5 Aikchol Hospital
アコール病院
チョンブリ チョンブリー初の民間医療機関として設立。 262 131 30万
6 Vibhhavadi Medical Center (VIBHA)
ヴィパワディー病院
バンコク ドンムアン空港近くで、ベッド数250床、24時間体制の三次急性期の民間病院を経営。 263  486 46万
7 Khon Kean Ram Hospital
コーンケンラム病院
コンケン BDMS傘下のラムカムヘン病院グループ。東北部及びメコーン川近隣国で最先端の病院として機能。JCI認定。 184 27 20万
8 Rajyindee Hospital
チェンマイ・ラムメディカル
ソンクラー チョンブリ病院グループに所属。ソンクラーを訪れる外国人旅行者を中心に医療サービスを提供。 196 30 26万

 

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